GPU と CPU のストレステスト:違いと重要性
PC の性能を語るうえで「ストレステスト」は欠かせません。愛好家や自作派、日常的に PC を使うユーザーにとっても重要なプロセスですが、ストレステストにも種類があります。とりわけ代表的なのが CPU と GPU に対するテストです。両者は狙う対象も意味合いも大きく異なります。その違いを押さえれば、トラブルの診断、安定性の確保、投資したハードウェアの性能確認が格段にしやすくなります。
システムの頭脳:CPU ストレステストとは
CPU(中央処理装置)はコンピューターの頭脳です。OS やアプリの制御からゲームの物理演算まで、幅広い汎用タスクを担当します。CPU ストレステストは、複雑な数値計算やロジック処理を絶え間なく送り込み、プロセッサーを限界まで追い込みます。
主な目的は次のとおりです。
- 安定性の検証: 自作 PC を組んだばかり、CPU をアップグレードした、またはオーバークロックを施したといった場面で、最大負荷に耐えられるか確認します。テストは CPU だけでなくマザーボードやメモリも含めたシステム全体のストレスチェックになります。
- 熱特性の確認: CPU を 100% で動かし続けると大量の熱が発生します。空冷でも水冷でも冷却ソリューションが十分かを判断する最良の方法です。温度が上がりすぎれば、自動的にクロックを下げるサーマルスロットリングが発生し、性能が低下します。
- 電力供給の検証: フルロードでは相応の電力を消費します。PSU(電源ユニット)やマザーボードの VRM が安定した電力を供給できるかどうかも確認できます。
CPU ストレステストは、計算負荷に対する最悪シナリオをシミュレートします。グラフィックスとは無関係で、あくまでロジック処理とシステム全体の安定性に焦点を当てたテストです。
ビジュアルの主役:GPU ストレステストとは
GPU(グラフィックス処理装置)は膨大な並列処理を得意とする専用プロセッサーです。CPU が少数の重いタスクに集中するのに対し、GPU は大量のシンプルなタスクを同時に処理し、画面上のピクセルを描画します。幾何処理やシェーディング、ポストプロセス、そして WebGL や WebGPU といったブラウザーベースのワークロードも GPU の守備範囲です。
GPU ストレステストの主目的は以下のとおりです。
- グラフィックス性能と安定性の検証: ベンチマークやパワフルなゲーム、レンダリングアプリで長時間使ったときに、描画エラーやクラッシュが起きないかを確かめます。
- 温度と冷却の確認: GPU は高負荷時に大量の熱を発生させます。ファンカーブやヒートシンクの性能が十分か、どの程度でサーマルスロットリングが起きるかを把握できます。
- 電力・VRAM のテスト: 最新の GPU は一時的に大電力を引き出し、VRAM も大量に消費します。ストレステストで限界を把握しておけば、実運用での不安を減らせます。
ボリュームシェーダーベンチマーク の Mandelbulb ベンチマークは、GPU ストレステストの一例です。フラグメントシェーダーを徹底的に使い倒し、フレームタイムやメモリ帯域、熱安定性を浮き彫りにします。
どちらのテストが必要かを見極める
CPU と GPU のストレステストは、目的が異なる補完的なツールです。CPU テストはシステムの土台を固め、GPU テストはビジュアル体験のコアとなる部分を検証します。用途別にどちらを優先すべきかを整理しましょう。
- ゲーム用途: 安定した 60 FPS や 144 Hz を狙うなら GPU テストが不可欠です。ただし、フレーム時間の揺れが激しい場合は CPU 側のボトルネックも疑い、両方のテストを組み合わせて調べましょう。
- 動画編集・3D レンダリング: これらのワークロードは CPU と GPU の双方に負荷をかけます。レンダリング中のクラッシュが発生した場合、まず CPU テストでシステム全体の安定性を確認し、問題がなければ GPU テストでハードウェア加速が正常に働いているか調べます。
- 原因不明のクラッシュ: ブラウジングなど軽い作業でも落ちる場合は、CPU やメモリの安定性を疑い、CPU ストレステストから始めると原因を絞り込みやすくなります。
最終的なポイント
CPU と GPU のストレステストは相互に置き換えが効くものではなく、互いを補完する関係です。CPU テストはシステムの土台を確認し、GPU テストはモダンなビジュアル体験を支えるコンポーネントの信頼性を検証します。用途に応じて適切なテストを選べば、高速で安定したマシンを構築し、ハードウェアの力を最大限引き出すことができます。